vol.08

Vol.08

児童養護施設 わかば園 ケアワーカー伊賀 久美 さん

「児童養護施設で働いて」

児童養護施設という場所や状況をほとんど知らず、学生時代にぼんやりと「子どもたちのお世話をしたい」と思い、卒業後にこの世界に入ったのは22歳の時でした。児童養護施設についての知識も全くと言っていいほどなく働き始め、まずは子どもたちの仲間に入れてもらうことから始めた現場でしたが、始めの 1ヵ月は楽しいと感じる毎日で何も考えず子どもと同じ立場で過ごしていたように思います。働き始めて1ヵ月が経つと、次第に子どもたちの家庭の状況や抱えた問題などがわかるようになり、ただ「楽しい」と過ごしていける仕事ではないと認識するようになり、自分はとても責任のある仕事を選んだと感じるようになりました。就職前に決して楽観的に軽く考えていたわけではなかったものの想像以上に大変で難しく頭を悩ませる毎日でした。

仕事を始めて1ヵ月後に初めて入所の女児を受け入れることになりました。今までは、在園していた子どもたちに自分が仲間に入れてもらい教えてもらう立場であったのに、子どもを受け入れ他の子どもたちと仲良くなれるように配慮していくこととなり、とても緊張したことを覚えています。気が強く人付き合いが上手でなかった女児でしたが、次第にみんなの仲間になり仲良く打ち解けていく状態を見守り嬉しく思ったこともありました。この子どもも現在は中学2年生になり、今でも会話の中で「私と先生は同級生だから」とお互いのことを振り返ります。この女児が入所してきた日のこと、関わりの中でのエピソードなどを話すと恥ずかしそうに笑っている姿を見て、自分の9年間を一緒に振り返ることもできます。こういう時間を味わうには子どもたちの近くに居続けることや、苦楽を共にすることも必要で、嬉しいと感じる時間とともに本当に責任のある仕事だと実感します。

仕事していてやりがいを感じるのは、自分ではないといけない関わりを求められる時。普段は言葉遣いも態度も悪く反抗ばかりしていても、困った時や悩んだ時に「話を聞いて」と訴えてきた子どもの口から「先生に聞いてもらいたい」「先生じゃないとダメなんよ」と言われた時は、困った時に私の顔を浮かべてくれ頼ってきてくれたということで、日々の苦労が報われます。普段から子どもたちと何気ない会話を心がけていても、噛み合わず食い違い意見がぶつかることが多くありますが、自分という存在で少しでも悩みが軽減できたのなら嬉しいと素直に感じます。

働き始めた当時は、子どもの保護者に代わるものはなく保護者という存在を超えてはならないと自分に言い聞かせることがありましたが、最近になり保護者にはなれなくても保護者からの支援も関わりもない子どもに対しては保護者以上の存在や関わりを心がけ、精神的な繋がりを持ってもいいのではと思うようになりました。これは、保護者を超えたい、保護者は頼れないということではなく、保護者と離れ、保護者に頼れない状況にある子どもに対して保護者のように支えてあげられる、保護者のように頼ることができる大人が必要であるということから、その安心できる存在になり必要であれば保護者を超える存在でもいいんだと思うようになりました。職員の入れ替わりや子どもの入退所が多い状況にあり、子どもたちに一定の関わりや安心感を用意することが困難な現状ではありますが、その中でもいかに信頼し合い支え合うかを考えいかないといけないと思い、日々の関わりや今後の対応などに頭を悩ませています。

それでも、子どもたちの成長を見ると嬉しく感じ、行事などで一緒に楽しいと感じる時間を過ごしたり、日常の中で些細なことで一緒に笑っている時は、ここにいて良かったと感じます。また、卒園した子どもたちが社会に出てから園に戻り懐かしい昔話をしたり、「先生まだおったんか」「他の先生はよくわからん」「懐かしいなぁ」と言われた時に、自分がこの仕事を続けている意義を改めて感じる瞬間となります。これからも子どもたちに「2歳の時は○○だった」「初めて会った時はこんなことを言ってた」と昔話をしてあげられる一人として、自分のやれることを見つけて頑張っていきたいと思います。

( 記事提供/児童養護施設 わかば園 伊賀久美  )