vol.07

Vol.07

自立援助ホームあすなろ荘高橋 亜美 さん

「社会の子どもという視点〜自立援助ホームから〜」

みなさんは自立援助ホームをご存知でしょうか

自立援助ホーム(以下ホーム)は虐待などの理由から家庭で生活の出来ない義務教育を終えた15歳から20歳までの子どもたちが働きながら自立に向けての生活をする場所です。ホームは児童養護施設のような措置施設ではなく児童福祉法では「児童自立生活援助事業」として定められています。制度的位置づけなどの違いから元来厳しい財源のもとで運営されてきましたが、近年の児童福祉法改正によって補助金等が増額されたこと、ホームを必要とする社会背景などからホーム数は軒並みに増加しており現在は全国に56カ所のホームが運営されています。

入所してくる子どもたちは、児童養護施設を中卒、高校中退などの理由から退園したり児童自立支援施設や少年院の退所者、家庭裁判所からの補導委託先として、婦人保護施設やシェルター、直接家庭からと様々な経緯で入所してきますが"安心して生活出来る家庭がない、生きて行くための家庭の後ろ盾が全くない" という点においては入所するすべての子どもたちに共通していることです。

子どもたちがホームを利用する上での条件として大きくは3つの柱があります。

①働くこと②寮費を払うこと③自立生活に向けての貯金をすることです。

また子どもたちは自ら稼いだお金で毎月3万円の寮費、国民健康保険税、住民税などの税金、医療費をはじめ生活に必要なもの全てを賄わなければなりません。社会ではまぎれもなく"児童"として扱われるはずの子どもたちが、ホームでは私たち社会人と同様の労働と責任が課せられているのです。ホームでは契約という手続きをとり子どもたちは入所をします。つまり"自分で決めて入所する"ということですが、自ら好き好んでホームに入所する子どもなど1人もいません。「ここしか生きる場所がない」という背景を持つ子どもたちばかりです。

支援者としての役割

ホームにくる子どもたちのほとんどが「大人なんか全く信用出来ない」「自分なんかいつ死んだっていい」という思いを抱いて生きてきました。それは本来無条件に自分を愛してくれるはずの、大切にしてくれるはずの親や家族から存在を否定され、体や心をズタズタに傷つけられるという経験を強いられてきたこと、誰も自分を助けてくれなかった社会で生きて来た結果、子どもたちがそのような思いを抱くことは当然であり自然なことだと私は思います。

私たちの想像を絶する苦しみ、悲しみ、憎しみ、痛みを心の中に閉じ込めてきた子どもたちを支援することは、何よりもまず子どもたちから"信頼され必要とされる大人"になることからだと思います。

私の働くあすなろ荘では家庭的な雰囲気を大切にしながら、ゆったりとした生活空間のなかで子どもたちと衣食住を共にしながら子どもたちの心に寄り添い、生活、就労、生きて行くことを支援しています。私たちは指導•管理する大人ではなく、相談•援助する大人という立場で関わることも根底におき関わっています。

"生活を共にするからこそ築きあっていける信頼関係"に勝るものはありません。

日常生活のなかで、子どもたちに「あなたはかけがえのない大切な人」「あなたの命と心はあなただけのもの、あなた自身が守るもの」というメッセージを伝えることを常に意識して支援をしています。また、子どもたちが生き抜いていくために抱いて来た「僕が悪い子だったからたたかれた」「自分なんか生まれてこなければよかった」などの認識を、「あなたは悪くないよ」「生きていてくれてありがとう」とあらゆる生活の場面で、あらゆる手段を通して伝えることを大切にしています。これらは支援者としてやるべき最大の役割だとも思っています。

私はあすなろ荘で子どもたちと関わるなかで、「働かないではなく働けない」という体や心の状態があること、「やらないではなく出来ない」という精神状態があることを子どもたちがもがき苦しむ姿から身を持って学び、社会の子どもへの無責任や放任を「自立」「自己責任」「自己選択」という言葉にすり替え、子どもたちになすりつけて、誤魔化すのはもうやめようと思いました。それは子どもたちに起きている問題、抱えている問題を多角的に見る視点を支援者は持つ必要があるということです。

子どもの問題は私の問題

この社会は「子どもと親、家族」という枠に囚われすぎではないでしょうか。

"親や家族が十全に機能しない場合に社会がサポートするのはあたりまえ""上手く子育て出来ない親がいてもいい"と親も社会も思えること、頼り合い、支え合い、分かち合うシステムが必要だと考えます。

社会的養護の問題をマイノリティの問題だと捉えている方は多いかと思いますが(社会的養護のもとで暮らす子どもは約5万人20歳未満の人口約2349万人の0.2%)この社会が子どもをいかに大切にしていないかの究極の表れだと私は思っています。

社会的養護のもとで暮らす子どもたちを自分とは無縁のかわいそうな子どもと捉えるのではなく、私たちのつくった社会の一番の被害者として捉えるべきです。社会の大人たちが「この社会の子どもの問題は私の問題」として向き合うことが必要です。

子どもを大切にしない社会は衰退の一途をたどるし、幸せな成熟した社会にはなれません。

子どもは大人と社会を映す鏡です。近々の調査で数字としも浮き彫りになっています。(子ども自殺者972人、子どもの暴力行為6万件)『全ての子どもたちが子ども時代を健全に生きることを保障する』ことは社会の義務であり責任です。

私が選んだこの仕事

話が広がってしまいましたが、最後に、私は何故この仕事を自分が選んだのかと今でも自問自答しながら働いています。辞めたいと思った時は1万回、子どもたちとの関わりのなかで、苦しすぎて発狂しそうな思いも、押しつぶされそうな思いも、はらわたが煮えくりかえるような思いもたくさんたくさんしてきました。それでもやっぱりやっててよかったと心の底から思うのです。あすなろ荘での子どもたちとの出会いを一生涯の宝ものだと思うのです。「生きていてくれてありがとう」と心臓の奥から湧き出るような気持ちで思うのです。

それは「人の生きる力」にふれ、「人が生きていくために本当に必要なもの」を子どもたちが生きる姿から教えてもらっているからかも...こんな理屈でもないかもしれません... これからも自問自答しながら、支援者として社会の大人として創造力と情熱と希望を持ち、子どもたちに誠実な気持ちで向き合っていきたいと思います。

( 記事提供/自立援助ホームあすなろ荘 高橋亜美  )