vol.05

Vol.05

パン屋(製造)小林 綾乃 さん

「落ち込んだときに励みになるのは、仲間たちからのメッセージ」

神奈川県内のパン屋で働く小林彩乃さん。主に揚げパンの製造を担当し、午前4時に出勤すると、成形されたドーナツなどを次々とフライヤーに投入して、こんがりキツネ色になるまで丁寧に揚げていきます。食べ物を作るのが大好きで、小学1年生から高校を卒業するまで過ごした児童養護施設では、「おやつクラブ」を友達と結成して、ケーキやシュークリーム、シャーベットまで作ったほどの腕前。「今の仕事も毎日が楽しい」と笑顔で話します。「3年前の入社当時は、出来上がったパンの包装を担当していましたが、いまはやりたかったパン作りができて本当に嬉しい。まだ不慣れなところもあるけれど、ちゃんとマスターして、クロワッサンとか、他のパン作りも任されるようになるのが目標です」もちろん仕事だから、楽しいことばかりではありません。ミスしてしまい先輩に注意されることも...。そんな時は、施設に訪れていたカウンセラーの言葉を思い出すそうです。「高校にいる頃から飲食店でアルバイトをしていましたが、仕事の覚えが悪くてヘコむことなんてしょっちゅう。それを相談したら『彩乃ちゃんは、すぐに色々できないんだから、ちょっとずつ覚えていけばいいんだよ』って励ましてくれたんです。『ああ、それでいいんだ』ってすごく安心できて、いまだって失敗はあるけど、焦らず、だけど任されている仕事を確実にこなせるよう頑張っています」落ち込んだときのお助けアイテムは、そういった言葉だけではありません。高校を卒業と同時に施設を出る時に仲間がくれた寄せ書きや、B4Sのサポーターたちからのメッセージもそう。沈んだ心を勇気付けてくれます。

一人暮らしがスタート、一人前の女性になりたい

いまでは社交的で、そのヒマワリのような明るさで、周りの人たちも元気にさせてくれそうな小林さん。ところが中学生までは引っ込み思案で、学校では友達作りに悩んだといいます。「施設の友達には慣れもあるから明るく接することができたんですが、学校だと誰にも話しかけられない...。まるで二重人格のようでした。だけどこのままじゃいけない、もっと積極的になろうって決めて、高校進学をきっかけに、とにかく喋るようにしたんです。そうすると、皆も会話に乗ってくれて、自然に友達も増えていきました。いまでも一緒に遊んだりする、私にとってかけがえのない存在です」仕事とプライベートで、充実した日々を送る小林さん。なんと今年3月に会社の寮を出て、念願の一人暮らしを始めたそうです。「気に入ったラグやお風呂のマットを買ったり、自分好みの部屋にしていくのは、とても楽しいこと。反面、水道光熱費など、これまで気にすることのなかった生活費を自分でやりくりしていくことの大切さも知りました。以前に巣立ちプロジェクトでもらった節約レシピが、いまになって役立っています(笑)」これからの目標、そして夢は、自立した一人前の女性になり、いずれは結婚すること。幸せな家庭を築き子育てにもチャンレンジしたいとか。何事にも前向きな小林さんなら、それらを実現する日も遠くないでしょう。最後に小林さんは、自身と同じような経験を持つ仲間たちへメッセージを贈ってくれました。「働くにしろ進学するにしても、何か大きな壁にぶつかった時は、悩みを一人で抱え込まないこと。施設を出た直後は一人ぼっちになりがちなので、誰かと関わる場所を見つけ出すことが大切です。私の場合はそれが、アトモプロジェクトだったりしました。そういったところで、心許せる人に悩みを相談しながら前に進んでいけばいいんだと思います」

( 記事提供/NPO法人ブリッジフォースマイル発行「Smile!」先輩たちの今  )