vol.04

Vol.04

社会福祉法人 舞鶴学園 ケアワーカー桑原 位修 さん

「舞鶴学園の今」

「先生なぁ、今になって俺ほんま思うねんけど、ここ(舞鶴学園)に来てほんま良かったわ」―――こう話すのは、今年の3月で舞鶴学園を巣立っていく高校3 年生のA男である。措置された当初は「だるい、しんどい、眠い」が口癖で、自分を児童養護施設へ追いやった大人達への怒りを込めた言動が目に付いたと聞く。そのA男が最近になって「ここに来る前は、確かに今とは比べ物にならない不潔な環境やったけど、あの時は『それでもいい』からあの場に残りたかった。でも今は違う。うまく言えんけど、あの時あの場所に残ってたら今の自分は無いしな。」

A男は中学3年の進路選択直前に学園にやってきた。学力的に決して高くなく、色々な選択肢も囁かれた。しかし持ち前の直向さと実直な性格、その彼を支えた周りの思いもあって、なんとか私立高校への進学が叶った。転校前の担任の先生は合格の報告に「まさか!!」という驚きと喜びのあまり涙を流され、校長先生は遠方からわざわざ感謝の挨拶に来られ、「奇跡としか思えない」と喜びを語ってくれた。高校へ入ってからは、3年連続皆勤賞。毎年欠点を取るものの追試で踏ん張り、昨年末に京都市内の企業に就職が決まり現在に至る。だからといって真面目一徹ではなく、風貌はごく最近の若者で異性の友達も多く、ふざけが過ぎて大人に注意されたりもする。A男は6舎ある内の1小舎の子どものリーダー的存在であり、皆一目を置いている。同じ舎の子どもが何か問題を起こした時は、職員と一緒に頭を抱えてくれることも少なくない。同じ家で何か問題が起った時や職員が体調不良のときなどは、誰に言われるまでもなく彼が中心となって家事を完璧にこなし、職員に気を配った姿勢を自然と見せる。

先日も、月1回恒例の舎の話し合いがあった。喫煙や万引きなど同じ家の子どもが起こした問題について「お前らここに居る内に失敗しといて良かったやん。社会に出てからでは遅いからな。でも同じ失敗は二度としたらアカンて、俺は思う。」と皆の前で諭すように話す。さらにA男は続ける。「先生らぁはな、お前らが悪いことしたら、その後何時間も考えて、休みもつぶしたりしてお前らのことを考えてくれてるんやで。そのことを忘れたらアカン。もっと感謝せなアカン。」傍で聞いていてなんとも複雑であったが、A男の言葉に、心から感謝した。一概には言えないが、児童養護施設においてA男のような子どもは、いったいどれ程いるだろう。まるで今のA男とは対照的に、心が揺れ、肝心な時に踏ん張りが利かずにフラフラと流され、喫煙、万引き、性的な問題行動などに手を染め、歯止めが利かない子どもの方が断然多い。そのような子ども達へ対応すべく、十分に関わろうとするが、現行の法制度では困難な実情も肌で感じている。社会に出る前に、もしくは社会に出てからでも、いつかA男のように振り返ることが出来るよう、現場のケアワーカーは、日々子どもと「寄り添う」ことに試行錯誤し、神経をすり減らしている。

( 記事提供/社会福祉法人舞鶴学園 ケアワーカー 桑原 位修  )