vol.03

Vol.03

美容師金澤 宏美 さん

「手に職をつけたかった"美容師"は、「好き」を「仕事」に」

青山通りから少し入ったところにある開放的なヘアサロン。店内は壁一面が鏡張りで、ところどころにヤシの木が配された癒しの場といった趣き。一歩足を踏み入れると一瞬にして日常を忘れてしまいそうです。そんな店内を、きびきびと動きまわるスタイリッシュな女性が金澤宏美さんでした。ファッション誌から飛び出して来たような、とてもお洒落な26歳。現在、「U-REALM」でアシスタントとして働きながらスタイストを目指しています。

「どうして美容師になったの?」と尋ねると、「昔から、美容師になりたかったんです。小学校のときから、ちっちゃい子の髪をいじったり、朝みんなの髪を結えたりしてたんですよね。職員が30人くらいいる女の子全員の髪の毛の面倒をみるのは大変なので、それを手伝ってたんです。その頃から髪をいじるのが好きでした」中学校卒業後、美容の専門科がある高等学校に3年通い、18歳で王子のヘアサロンに就職。

「手に職をつけたい、というのはありましたね。でも料理も好きだし、服を作ったりするのも好きだったんです。だから施設の職員には『美容師じゃなくてもいいんじゃない』と言われたりしました。でも自分の中ではやっぱり"美容師"でした。迷いはなかったです」

王子のサロンは地域密着型で、年配のお客様が中心。もっと若い世代の髪を切りたいという思いが強くなり、4年で退職。2年前のオープニングで今のお店に就職し、昨年夏に今の店舗に異動しました。「早くスタイリストになりたい」と言う宏美さん。朝の開店前と夜の閉店後は毎日髪を切る練習にあけくれる努力家でもあります。「美容師に必要なのは"手"とセンス。手はちょっとブランクがあるとすぐに動かなくなってしまう。とにかく練習が大事なんです」

月に一度は子どもたちの髪を切る ボランティア仲間の輪を広げたい

宏美さんは、月に1、2回、施設に戻って子どもたちの髪を切っています。多いときには1日20人もの子どもたちの髪を切るそうです。「小さい子どもたちにも"手に職をつけたい"、と思っている子はたくさんいると思います。"専門職ってどんな感じなのかな?"と思っている子どもたちの、参考になればうれしいです」。子どもたちの話になると、宏美さんの表情が和みます。「こういう活動を、広げていきたいんです。他の専門職の人たちとコラボレーションできるともっとおもしろいと思います」と夢を語ってくれました。

「専門に3年通わせてもらったことは、ほんとうに感謝しています。でも、施設にいた頃は、つらいこともたくさんありました。私は、自由がないことや自分の時間が少ないことがきつかったです。どうやって乗り越えたか? 我慢ですよ。戻るところはそこしかないですから」今施設にいる子どもたちに、今の宏美さんから伝えてあげたいことは?「子どものころは、自分がなぜ施設に入っているのかわからなかった。片親でも、親がいるんだから家に帰りたいと思うのは当然です。施設にいる理由が理解できないのに、いなきゃならないからつらい。でも、社会に出たら、施設の体験が役に立つことがあるし、施設にいれたことをありがたいと思えるときがきます。だから頑張ってほしい」

今は自立し、しっかり自分の道を歩く宏美さん。結婚して子どもができたら、美容師は辞めて、我が子と一緒にいたいと言います。「自分の子どもには、ひとつ頑張れるものをみつけてほしい。厳しく育てて、やりたいようにやらせてあげたい」この言葉には、宏美さんの生き方がつまっています。

( 記事提供/NPO法人ブリッジフォースマイル発行「Smile!」先輩たちの今  )