日本子ども虐待防止学会 第16回学術集会くまもと大会 山崎史郎

Profile:昭和26年大阪府生まれ。昭和52年立命館大学大学院修士課程修了、広島市情緒障害児短期治療施設心理療法士となる。昭和55年から立命館大学助手、平成元年熊本短期大学助教授、平成12年より、熊本学園大学社会福祉学部教授(現在に至る)。熊本県臨床心理士会会長、熊本県精神保健福祉協会副会長、熊本県警察本部少年課被害少年カウンセラーなどを務める。公立中学校スクールカウンセラーなど、子どもの心理支援の仕事に一貫して携わってきた。恒成茂行名誉教授の後を継いで、「子どもの虐待防止コンサルテーションチーム・くまもと」代表を務めている。家族は3人の子ども達がそれぞれ独立して、現在、妻と二人暮らし

専門家の協働で子ども達に希望を

専門家の協働で子ども達に希望を

-子どもの虐待防止コンサルテーションチーム・くまもと-

 子ども虐待防止の取り組みの最大の特徴は、領域横断的であることです。医療、保健、法律、心理、福祉はじめ実に多くの分野の人間が関わり、協働していかなければなりません。すべての面に精通した専門家を想定することには無理があります。医師でありかつ弁護士であって、しかも福祉施設の施設長である人などを期待するのは現実的ではありません。そこで、各分野のスペシャリストの協働をうまく組み上げることが大事になります。
 「子どもの虐待防止コンサルテーションチーム・くまもと」は、平成9年に結成され、現在まで14年に亘り、活動を続けています。これは、熊本大学医学部法医学教室の恒成茂行教授が県内の専門家に呼びかけられたものです。先生は臨床法医学を標榜し、生きている人々の幸せに寄与する法医学を目指されていました。犯罪被害、自然災害、交通事故など数々の分野での司法解剖を手がけ、その知見が裁判などを通じて、あるいは他領域の専門家への助言や一般の方々への啓発として生かされることを願ってこられました。
 先生が子ども虐待問題に関心を持たれたのも、「虐待で亡くなって解剖台に上がる前に何とか手が打てないものだろうか」と考えられてのことであったと聞いています。それで、県内の子ども虐待に関心を持つ専門家に呼びかけられたのです。小児科医、精神科医、弁護士、臨床心理士、児童施設園長らが呼びかけに応えて参集しました。
 このチームの主たる活動は、当初は毎月1回、その後は2ヶ月に1回、県中央児童相談所が扱う困難ケースについて事例検討会を開き、児童相談所職員のみなさんに助言することです。また、県内各地に研修講師を派遣したり、熊本市の要保護児童対策地域協議会に民間団体として委員を派遣したりしています。熊本県内でも子どもの虐待死事件が起ったり、重大な被害が出たりしています。相談件数こそようやく高止まりの傾向が出ていますが、現代の社会経済状況の中で、なお出口が見えない状態です。児童相談所や児童施設職員のみなさんを理論的・実践的に支え、共に解決の方向性を模索する会の活動の意義は現在も高いものがあります。
 そのような中、日本子ども虐待防止学会の年次大会が本年11月27日(土)~28日(日)に熊本市の熊本県立劇場で開催される運びとなりました。お世話をさせていただく実行委員会の中核を担うのが、このコンサルテーションチームです。恒成先生は早くから準備を指揮しておられたのですが、大変残念ながらくまもと大会への強い思いを残しつつ、昨年8月に病のため、ご逝去されました。コンサルチームの代表は山崎が務めながら、学術集会長として準備を引き継いでいます。大会では熊本からの発信として、「こうのとりのゆりかごを巡る諸問題」ほかのシンポジウムや多数の分科会、一般演題が用意されています。学会というアカデミックな会合ではありますが、問題の性質上、幅広い職種の実務者、NPO・民間団体がお集まりです。この大会が全国の子どもたちの幸せにつながる、一つの契機となることを願っています。どうぞ、みなさまも秋深い熊本にいらしてください(ホームページ:http://jaspcan.umin.jp/index.html)。
日本子ども虐待防止学
医療・保健・福祉・教育・司法・行政などの実践家・研究者が一同に会し、実践経験や研究の交流による子ども虐待防止の取り組み推進を目的とした研究会。学術集会は年1回開催。