社会福祉法人 カリヨン子どもセンター 理事長 坪井 節子

Profile:1978年、早稲田大学第一文学部哲学科卒業。1980年、東京弁護士会にて弁護士登録。1987年から、東京弁護士会子どもの人権救済センター相談員。東京弁護士会子どもの人権と少年法に関する委員会委員、日弁連子どもの権利委員会幹事など。2004年6月からNPO法人(現在は社会福祉法人)カリヨン子どもセンター理事長。

子どものためのシェルター

子どものためのシェルター

-“今すぐ助けてほしい”という子どもたち!-

  社会福祉法人カリヨン子どもセンターは、「今夜帰る場所がない!」という子どもたちのためのシェルター(緊急避難場所)を運営する法人です。子どもたちのSOSを受け止めるために、日本で初めての子どもシェルター「カリヨン子どもの家」を2004年6月に開設しました。開設当初からシェルターに逃げ込む子どもが途絶えることはありません。約5年間でシェルターを利用した子どもはのべ150名を超えました。13~20歳の子どもたち、約7割は女の子です。
  現代の日本で起きる大人から子どもへの暴力、シェルターを必要とする10代後半の子どもたちの現状を、知っていただければと思います。

  児童虐待は、①身体的虐待、②心理的虐待、③ネグレクト(養育放棄)、④性的虐待の4つに分類されます。しかし、これらの虐待は独自で起きるものではなく、複合的に複雑に絡み合い、子どもの心身をぼろぼろに傷つけていきます。カリヨン子どもセンターで出会う子どもたちは、16歳、17歳になるまで家庭で暴力を受けていることを、誰にも相談できず、助けてもらえず、耐え続けてきたケースも少なくありません。
  殴られる、罵られる、アルバイトで稼いだお金を搾取される、家に入れてもらえない、性的な嫌がらせをされる、食事や生活費を与えてくれない、外出したまま何日も帰ってこない、他の兄弟を差別して育てられる、赤ちゃんのときに見捨てられ、実の親の顔を知らない子もいます。家庭の抱える問題の背景に、親の病気や貧困がある場合もありますが、裕福な家庭で有名校への進学を暴力で強制され、逃げてきた子どももいました。

  「シェルターに逃げたい!」という相談は東京弁護士会の子どもの人権110番が受け付けます。カリヨン子どもセンターと東京弁護士会が連携し、すべての子どもに「子ども担当弁護士」がつき、シェルター入居後はスタッフと共に子どもの相談にのっていきます。
  また児童相談所と協定を結び、シェルターにはいる18歳未満の子どもは「一時保護委託」を受けることができます。日本は親の持つ権利(親権)がとても強く、この親権を制限して子どもを保護できるのは、児童相談所だけでした。これまで、民間の保護施設の開設が難しかったのには、こうした事情がありました。しかし、児童相談所の一時保護所は、保護された小さな子どもで満杯です。すぐに一時保護しなくても命の心配のない年齢の高い子、保護所での集団生活になじめない精神状態の子は、手助けが難しい状況にありました。
  電話相談や少年事件をとおして、今夜の居場所を必要とする子どもたちと出会ってきた弁護士、従来の児童福祉では支援が届かない高齢児をなんとか助けたいと考えていた児童福祉の関係者たち、双方の思いが合わさって、「カリヨン子どもセンター」そしてシェルター「カリヨン子どもの家」は生まれました。

  社会福祉法人カリヨン子どもセンターは、次の施設と事業を運営しています。 シェルター「カリヨン子どもの家ガールズ」(女子・定員4名) 「カリヨン子どもの家ボーイズ」(男子・定員2名) 自立援助ホーム「カリヨンとびらの家」(男子・定員6名) 「カリヨン夕やけ荘」(女子・定員4名) デイケアプログラム「カリヨンハウス事業」
  施設はいずれも小さな一軒家です。職員やボランティアスタッフが交代で子どもたちと寝食を共にし、家庭的な暮らしができるように工夫しています。
  シェルターの滞在期間は約2カ月です。この間に、弁護士や児童相談所が子どもや家庭の話を聞き取り、状況を調査するなどして、子どもの希望をふまえ、今後の生活の見通しを立てていきます。家庭へ戻る子どもは全体の2割です。多くの子どもは、児童養護施設や自立援助ホームに入居していきます。
  自立援助ホームは児童福祉法上の事業です。15歳~20歳の子どもが、約1年間スタッフや他の子どもと共同生活をしながら、就労しアパート自立ができるぐらいのお金を貯め、また生活スキルを身につけていきます。

  シェルターを訪れるのは、家庭から逃げてくる子どもだけではありません。児童養護施設で育ち、就職して社会に出たものの、仕事と住む場所を一度に失ってしまったという事情の子どもや、万引きや深夜徘徊によって家庭裁判所に送られ、家庭が引き取りを拒否したような子どももやってきます。
  住む場所も身寄りもない子どもは、ネットカフェを転々としたり、野宿をしたり、性産業に巻き込まれるなど、危険な生活を余儀なくされます。また少年事件を起こしたとはいえ、少年院が必要な状況ではなく、社会の中で十分に更生していける子どもも、受入れ先がなければ少年院に行かざるを得ません。また非行に走る子どもには、ほとんどの場合、家庭での幼い頃からの虐待や不適切な養育がある、ということも、皆さんに"知ってほしいコト"のひとつです。家庭から逃れるために、家庭で十分に食べさせてもらえないために、非行グループに所属していったり、万引きをしたりする子どもが多くいます。こうした子どもたちも、親身になって相談に乗り、支えてくれる人や環境、勉強をして学校へ通う機会さえあれば、全く違う人生を歩んでいけるのです。
  シェルター、自立援助ホームを必要とする子どもたちには、ひとりひとりの事情に則した十分なケア(時間、人、場所)が必要です。愛され、守られるはずの子ども時代を奪われ、能力や資力のないまま社会へ出なければならない子どもたちへの、社会全体の理解、時間をかけて見守る眼差しが広がっていくことを強く願っています。

  しかし、支援する大人にできることは本当に小さく、子どもたちの傷を代わってあげることはできません。それでも、大人や社会への信頼を失い、自暴自棄になっていた子どもが、少しずつ自分の将来への希望を見出し、歩き始めたときの輝きはまぶしく、いつも励まされます。
  そして、これは子どものシェルターの運営に関する"知ってほしいコト"、そしてご協力をいただきたいことです。
  シェルターには、法的な後ろ盾がありません。法的な位置づけのない施設や事業には、公的な機関からの補助金や助成金がありません。カリヨン子どもセンターのシェルター運営費は、個人の方たちや企業からご寄付が頼りです。財団法人SBI子ども希望財団からは、自立援助ホーム「カリヨン夕やけ荘」を開設するために改築資金、子どもたちのメンタルケアのためのカウンセリング資金、男子シェルターの開設運営資金などのご支援をいただいています。 シェルター活動は、ニーズのある限り継続していかなければなりません。どうぞ子どもの生活基盤を安定的に守るため、多くの方からのご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

  カリヨン子どもセンターでは、シェルターや自立援助ホームに入居した子どもへのカウンセリング、ボイストレーニング、アサーティブトレーニング、鍼灸などのケアメニューや、高卒認定試験や資格取得を目標にした学習、楽しみのためのピアノ、ハンドベル、カラオケ、絵画、フラダンスなどのプログラムを提供する「カリヨンハウス事業」を実施しています。それぞれ専門の講師の方たちに協力していただきながら、子どもが自分の内面と向きあうこと、喜びや大人と一緒に楽しむ時間を共有することができるように、さらなる充実を目指しています。
  また、働けない(から自立援助ホームには入れない...)、学校へ通う気持ちが持てない(から児童養護施設にも入れない...)という、シェルター後の生活場所がない子どもたちのために、少し時間をかけて心身の治療やこれからの人生について考えられる場所、一度諦めた高校や大学などの通学に再挑戦できる場所、軽度な知的障害、精神障害をもつ身寄りのない10代の子どもの生活場所が必要となってきています。
  カリヨン子どもセンターでは、これからも「大丈夫。ひとりぼっちじゃないんだよ。一緒に考えよう。あなたは大切な人。」というメッセージを伝え、子どもたちの心に寄り添い続けていきます。

子どものシェルターが全国に誕生しています!
NPO法人子どもセンターてんぽ(横浜)
NPO法人子どもセンターパオ(名古屋)
NPO法人子どもシェルターモモ(岡山)

それぞれの地域で福祉と司法の支援ネットワークを構築し、シェルターを運営しています。虐待を受けるハイティーンの子どもたちの現状が理解され、支援の輪が広がっています。

●シェルター、自立援助ホームが必要なときは...
  東京弁護士会子どもの人権救済センター   
  「子どもの人権110番」 TEL 03(3503)0110
  月~金 午後1時30分~4時30分、5時~8時  土 午後1時~4時
  (いじめ、不登校、体罰、少年犯罪...どんなことでもご相談ください)  

●活動についてのお問い合わせ、寄付のお申し出...
  社会福祉法人カリヨン子どもセンター事務局
  〒112-0014 東京都文京区関口2-4-6関口台ヴィレッジB-2
  TEL 03(5981)5581   FAX 03(5981)5582     
  HP http://www.carillon-cc.org/

シェルター
子どもたちが親等から虐待や生命の危機等により、一時的に避難し、生活する施設。その性格から場所は公表されていない。