NPO法人 ブリッジフォースマイル代表 林 恵子

Profile:96年株式会社パソナ入社。副社長秘書、人材派遣営業、登録者面接、派遣契約管理、人事などを担当。とある研修プログラムを通して児童養護施設の現状を知る。 04年12月NPOブリッジ・フォー・スマイル創設。理事長に就任。現在に至る。二児の母。

退所後支援とは

退所後支援とは

-本当にサポートが必要なのは、退所後-

児童養護施設を「退所する」方法は、3種類あります。「1、親元に帰る(家庭復帰)」、「2、他の施設等へ移る(措置変更)」、「3、一人暮らしを始める(社会的自立)」です。
ここでは、「3、一人暮らしを始める」子どもたちへの退所後支援に限定してご説明いたします。

退所後、一人暮らしを始めた子どもたちには、大きな環境の変化が訪れます。規制の多い集団生活から、自分次第の自由な生活へ。学業中心から、仕事中心の生活へ。手にするお金は、お小遣い月数千円から、給料月10万円以上へ。この大きな環境変化に加え、誘惑や悪意のある働きかけも少なくありません。経験も知識も少ない上、身近に支えてくれる大人がいない子どもたちは、当然のことながらトラブルに陥りやすくなります。職場の小さなトラブルで簡単に仕事を辞めてしまったり、家賃を払えなくなってホームレスになったり、仕事と住む場所を確保するために風俗店で働く中で望まない妊娠をしてしまったり、孤独感や経済苦から悪い誘いに乗って事件を起こしてしまったりなど、様々な問題が起こります。施設を退所した子が親になり、その子どもがまた児童養護施設にやってくる、という負の連鎖も指摘されています。

これらの実態を踏まえ、退所後支援が大切であることは十分認識されてきています。平成16年の児童福祉法の改正で、児童養護施設の目的として「退所した子どもたちを支援すること」が追加され、退所後3年間は子どもたちを支援することが義務付けられるようになりました。ところが、施設職員は、入所中の子どもたちの世話に手一杯で退所後支援まで手が回らず、その結果「トラブル解決」に奔走されるという悪循環に陥っています。

<特記したい最近の動向>

▼保証人の問題
「保護者」のいない子どもたちが、最初に直面する問題が「保証人」です。日本では、家を借りるにも、就職するにも、保証人が必要です。施設の子どもたちがアパートを借りる場合、施設長が保証人になることもありますが、子どもが家賃を払えなくなって行方不明になってしまう場合などは、その支払いが施設長個人になってしまいます。近年、退所後2年間までは負債を補償する制度が整えられたものの、その後の契約更新は補償対象外となるため、保証人になりにくい状況が続いています。

▼甘えられない子どもたち
施設の子どもたちには、「誰も頼れない。何もかもひとりでやらなければ」と考える傾向が強く、誰にも相談できずにいるうちにトラブルが大きくなってしまうことが少なくありません。しかしながら、社会福祉全般においても、人は誰もが一人では生きていけないことを大前提として、「自立とは様々な社会資源やサービスを活用しながら、自らの主体的な意思に基づいて生活を組み立てていくことであり、自立支援とは、人が人としての尊厳を守って主体的に生きていくための支援」と認識が変わってきています。児童養護においても、子どもたちが安心して甘えられる体制作りが喫緊の課題となっています。

退所後支援活動
児童養護施設等で生活した子どもたちが施設退所後円滑に一般社会での生活に入れるよう、様々な支援を行っている。