特定非営利活動法人 社会的養護の当事者参加推進団体 日向ぼっこ 理事長 渡井 さゆり

Profile:1983年生まれ。大阪府出身。子ども時代、児童福祉施設で生活。高校卒業後、フリーターを経て東洋大学社会学部社会福祉学科入学。在学中の2006年に「社会的養護の当事者参加推進団体日向ぼっこ」設立。2007年、社会的養護の下で生活していた人たちが気軽に集える「日向ぼっこサロン」を開設。 2008年、NPO法人格取得。理事長兼当事者相談員

社会的養護とは

社会的養護とは

-社会のひずみを反映している社会的養護--

「社会的養護」と聞いてピンと来る方はあまりいらっしゃらないかと思われます。なんらかの事情があり、家庭で適切な養育が受けられない子ども(「要養護児童」と言います)を、国や社会が家庭に代わって養育する仕組みのことですが、平たく言うならば「子どもの養育保護のセーフティーネット」です。
社会的養護を大きく分けると、「施設養護」と「家庭的養護」の2種類があります。 施設養護は、戦後に児童福祉法が制定され「養護施設」に名称変更、1997年の同法改正で現在の「児童養護施設」という名称になりました。
2004年現在の全国の要養護児童39,339人の内、およそ8割に当たる30,597人の子どもたちの入所先がこの児童養護施設です[厚生労働省調査(2004年)]。施設養護のみならず社会的養護の大部分を担っていると言える児童養護施設では、2~18歳(事情により2歳未満・18歳~20歳迄の入所も可能)の子どもたちが幼稚園や学校に通いながら職員(保育士・指導員など)と共に生活しています。家庭が様々なように児童養護施設の形態やルールも様々です。大半は一つの建物の中で20人以上の子どもたちが生活する大舎制、その他13~19人で生活する中舎制12人以下で生活する小舎制が一般的です。最近はよりきめ細かいケアを目指し小規模化が進められ、6名以下の子どもで生活するグループホームも増えつつあります。小規模ケアは職員体制や質が整っていれば子どもにとって良い環境であることは間違いありませんが、職員の勤務の過酷さや閉鎖的でどのようなケアがなされているかわからないという弊害もあります。
どのようなケアが子どもにとっていいものなのかは、ケアを受けた当事者でないとわかりません。小規模化が進められる中でも、「大舎の施設で育ってよかった」と言う当事者もいますし、「グループホームでも心を閉ざしたまま大きくなった」と言う当事者もいます。しかし、施設で生活する子どもはその未成熟さゆえにケアの主体として話をする機会に恵まれずにいます。そればかりか、施設によっては集団生活を乱さないために子どもにルールを守らせることが仕事になっている職員たちもいます。職員の本当の仕事は、何かしらの欠損感を持った子どもの欠かれてしまった部分を埋め、その子どもが人からも自分からも愛されるよう育むことです。児童養護施設の職員の方々がそういった本質的な仕事をするためには、難しい事情がまだまだあるようです。

さて、子どもの養育保護のセーフティーネットとしての児童福祉施設は他にもあります。2歳以下の子どもたちが生活する「乳児院」や「情緒障害児短期治療施設」・「児童自立支援施設」があります。児童自立支援施設(旧「教護院」)は「不良行為をなし、またはなすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導を要する児童」[児童福祉法第44条]が対象児童です。生活していた子どもたちの声を聴くと「不良行為」に辿り着かざるを得ない背景がある場合がほとんどですが、そう言ったことはあまり知られておらず、入所していた子どもたちが就職面接の際などに引け目を抱えがちな現状は依然として存在します。こちらも後に触れますが、社会的養護が正しく理解されていないがゆえの当事者の生きにくさと言えるでしょう。
 一方、現在より拡充が進められているのが家庭的養護の中でも里親制度です(家庭的養護にはその他「養子縁組・特別養子縁組制度」があります)。福祉先進国では既に一般的な里親制度、日本でも1948年に運営要綱が制定され、2005年現在2,370名の委託里親さんの元に3,293名の子どもたちが生活しています[厚生労働省調査(2005年)]。要養護児童数からするとおよそ1割ですが、過日NHKの朝の連続ドラマで里親家庭を舞台としたドラマが放映されるなど、普及が進められています。
社会のあり様を見せるかのような、社会的養護。その背景も昔は親の死別や行方不明が多かったのですが、現在では養育拒否・放任・怠だ・虐待・酷使が増えてきています。親がいない子どもが多かった昔に比べ、現在は虐待をうけた経験や発たちに障害などがある子どもたちが社会的養護を必要としています。そして、施設入所の場合ですと、施設で暮らしながら家庭(そう呼べる環境かは別として)があると言う難しさ、また退所後の親との関わりと言う難しさを背負う子どもたちが増えています。

当事者活動
児童養護施設や里親家庭で子ども時代を過ごした人たちが、退所後社会で孤立してしまったりしないよう、皆が集まれる場所を設け、相互に様々なネットワーク活動を行っている。